1.古代米とは

縄文期や弥生期に栽培されていた「発掘出土米」ではありません。「古代はす」というはすの種類がありますが、これは古代の地層から発掘出 土したはすの種が現代に蘇ったもので、学術用語として認知されています。

しかし、米には正式な古代品種は存在しません。何故ならイネの種子は、収穫後4年から5年で完全に発芽力を失ってしまいます。そのため、古代の施設や地層から発見されたもみが現代に蘇ることはありません。

ここでいう古代米とは、我々の祖先が栽培していた「古代のイネ品種」が持っていた特色を色濃く残したイネのことです。なかでも「赤米」や「紫黒米(しこくまい)」「香り米」という玄米に色や香りを持ち、そのため品種改良の対象にもならず、日本を含む世界中で細々と栽培され続けていた米のことを主体に考えています。

現在その古代米に注目が集まりつつあります。古代米の持つ色や香りの珍しさのみならず、日本人のルーツや古代の米や稲作へのロマン、そして健康食としての有用性が人々の意識を高めていると思われます。

2.古代米の特徴


野生のイネは、ほとんどが玄米の表面に赤い色素を含む赤米です。そして古くからの稲作地帯には、必ず香り米があります。

このように米が赤 いとか香りがあるとかの特徴があるため、栽培種としての品種改良の対象とならず、昔ながらの性質を保持してきた品種群が古代米といえます。

草丈が高くて倒れやすい・収量が低い・胚乳すなわち可食部の割合が低い・稲穂から米がはずれやすい・種子休眠性がある、などが特徴です。いずれもこれらの性質は、米に栽培にあたってはあまり歓迎されない特徴であります。

3.古代米の種類

赤米

日本の在来種では「総社赤米」と「対馬赤米」が普及しています。しかし、これらの品種は草丈が高く倒伏しやすく、収量も低いという欠点 があります。そこで改良種として、それらの欠点を改良した品種に「ベニロマン」と「つくし赤もち」があり、菓子や料理の材料として用いられていますが、これらの品種はいずれも濃紫色の芒(のげ)を持つので、稲穂が美しく、生け花やドライフラワーとしても利用されています。

紫黒米(しこくまい)

主として中国雲南省から導入されたいくつかの半改良種が栽培されていますが、穂から米が落ちやすく、収量も低いという欠点があります。インドネシア・バリ島の紫黒米をもとに育成された「朝紫」は、玄米色も鮮やかで、加工米飯や加工食品に適しています。また「奥羽368号」は、大粒多収で酒や味噌などへの加工用として有望な品種です。

香り米

宮城県の在来種から改良された「はぎのかおり」、高知県の在来種に由来する「ヒエリ」、「ヒエリ」の改良種「さわかおり」、ラオス品種を親とする「キタカオリ」、インド品種を親とする「サリークイーン」等があり、普通のお米には混合して炊飯し、香りを楽しむことを主な用途としています。